林檎の感触 新谷休呆歌集
けっして赦されることのない、そして哀しくせつないおとなの恋を描いた珠玉の歌集
人間は罪深い存在である。基督教が伝へてくれるやうに人間は原罪を背負うて生きてゐるのだらう。その罪は神に背いたことに端を発してゐる。だからわれわれはいつも誰かを裏切りながら生きて行かざるを得ない。
犯さうと思はなくとも人間は罪を犯してしまふ。それが恋だ。恋はするものではなく落ちるものだ、とは誰の言葉だつたか忘れてしまつたが、落ちるとは本人の意思とは別に唐突にやつてくることだ。まさに落とし穴に落ちるやうに落ちるのである。恋に落ちるといふことは人間として堕ちていくことかもしれない。なぜならば恋に落ちた瞬間から人は誰かを裏切りはじめるからだ。
ひとつの恋が成就し、結婚といふ結末を迎へて大団円といふわけにはいかない。その蔭で誰かを傷つけたことは間違ひない。幸福な家庭生活の合間にふと誰かに心ときめかせることもあるだらう。ただ、表沙汰にならないだけで、人は恋という罪を重ねて生きて行くのである。
そして僕はそんな罪を贖つてみたくなつた。それがこの『林檎の感触』だ。今まで詠んできた歌の中から恋の歌だけを集めてみた。結婚式の前に古い恋人との関係を精算しておくみたいな作業として恋の歌だけ纏めて出版することにした。はじめての歌集だけれど、第一歌集といふのではなく、第一歌集以前の成就しなかつた恋のやうなものだ。でも、きつといつまでも忘れられない僕の原罪のやうな歌集になるのだらう。
あとがきより
著者
新谷休呆
twitter:http://twitter.com/#!/ringonokanshoku
ブログ:http://www5f.biglobe.ne.jp/~yas007from-munakata/
北海道小樽市に生まれる。
福岡県宗像市在住。
二〇〇〇年十二月
塔短歌会会員
二〇〇一年一月
北限短歌会会員
二〇〇九年二月
第十四回北限賞受賞
目次
■林檎の感触 表紙
■著者略歴
■旅立ちそれは別れ
■ちいさな想ひ
■ゆきちがひ
■北鎌倉
■禁断の部屋
■やさしさは罪
■黒服の女
■ラム酒の記憶
■裏切り
■あやまち
■「黄昏のビギン」聞きながら
■地獄の花
■微熱のやうな恋
■理不尽な別れ
■京都へ
■きまづい日日
■不可思議な春
■新しき花
■あとがき
■奥付
■裏表紙
カラー写真18点
電子書籍発行:櫂歌書房
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